幸せってなんだろう。
そんな無限に繰り返される問いに、灯す屋は一つの答えを出している。
それは、おもしろい未来を描くこと。
どんな時代でも、どんな場所にいても、
たとえいまどんなに苦しい状況に陥っていたとしても、
おもしろい未来を描くことさえできれば人は幸せを感じることができると思う。
混沌とする世界情勢、先の見えない不景気、自然災害の脅威、急激に進む人口減少。
さまざまな不安が、毎日のように耳に入ってくる。
だからこそ、それをひょいと超えていけるようなおもしろい未来を描くことが大事だ。
今回も前編に引き続き、武市京子さんとお話ししました。
高校〜大学にかけての5年半、灯す屋のさまざまな活動に関わりながらともに歩んできた武市さん。彼女はいま、どんな未来を描いているのだろう。
取材・記事:佐々木元康(灯す屋)
写真:橋本優(灯す屋)
繋ぐ役割として成長したい
有田町出身の武市さん。この春に佐賀大学を卒業し、大阪にあるデザイン系の会社に就職することになった。色んな企業の展示会におけるブースのデザインから施工までを担当するらしい。
「これまでやってたこととそんなに変わんないですよね。デザイナーと企業さんをうまく繋げる役割です」
彼女は在学中、「Make-Sense」という学生サークルにおいて、所属する学生アーティストたちの展示・販売の機会をいくつもつくってきた。アーティストたちが制作に集中できるように。また、展示する場や人とアーティストをうまく繋げるために。
「繋ぐ役割ってこの4年間ですごく大事だなって思ったんですよね。そこをもっと磨きたい。お互いに伝えたいことを翻訳しながら、繋ぐ手助けができるようになりたい。だから、今はいろんな業界の人たちと繋がって学びたいんです」
いろんな業界の人たちと仕事をすることで、「自分の視野を広げたい」という武市さん。そうすることで、また違うところから有田を見ることができるのではないか。地元を元気にするための何かヒントを得ることができるんじゃないか。と、考えているらしい。
やっぱり、彼女の中心にはいつまでも有田があるようだ。
理由はないけど、黄色がスキ
「ちょっとした野望があって、いつかデザイン事務所を立ち上げたいなと思ってて。あと、黄色が好きなんで、全部黄色のショップもやりたいな。黄色の食べ物、黄色のドリンク、黄色の雑貨が並ぶセレクトショップみたいなのをやったらおもしろいかなと思って」
いま有田町内では、お店がオープンしたりイベントが立ち上がったり、結構おもしろいことが始まっていると感じるそう。本当はその場にずっといたい気持ちもあるけど…というところから、彼女は先の野望を話してくれた。
ちなみに、なんでそんなに黄色が好きなの?
「色んな人に聞かれるけど、あんまわかんない(笑)。元々はいとこ2人と仲良くて、3人でお揃いの物を買ってもらったりするときに、その中で担当カラーが黄色だったんですよ。覚えてもらいやすいから、だんだんキャラっぽくなってきた感じもします」
明確な理由はなく、たまたま。「あんなに好きなのに理由ないんだ!」と思いつつ、そんな軽さが心地いい。
有田が好きなことも、黄色が好きなことも、別に理由なんてなくてもいい。ただ、そこにいたから。それだけでいいんだ。なんだかちょっと肩の荷が降りたような気がする。
有田はもうおもしろいまち
おもしろい未来とは何ですか?と問いかけると、多くの人は少し悩んで答えてくださることが多いのだが、武市さんは即答してくれた。
「自分が何かやりたいなと思ってるときに、相談できる人や応援してくれる人がいる環境がおもしろい。だから、私はもう有田はおもしろいまちだと思ってるんです」
「わたしが高校2年生のときに『うちやま美術館やりたい』って言って、本当にただの想像だったことが結果的に実現してる(前編参照)。なんとなく思ったことを口に出したら、否定せずに、みんなで耕すのを手伝ってくれた。そんな環境があるのって、普通じゃないしすごくワクワクするなって」
「だから、今後わたしの後輩たちが『こういうことを思い描いてる』って相談してくれたときに、『有田だったらこういう人に出会えるよ』って伝えてあげられる場を続けていったり、大きくしていったりすると、もっとおもしろいワクワクする未来になるんじゃないかなと思います」
編集後記
武市さんに出会って約5年半、いろんな活動をしてきました。
勇気を出して春陽堂の扉を開いた高校2年生のときから、彼女は少しずつ変わっていきました。自分が何をしたいのかをまず感覚的に捉え、アクションを通じて少しずつその解像度を上げていく。すると、アイデアや想いがより周囲に伝わるようになって、仲間も増えていく。彼女の存在感はそんなふうにして高まっていったように思います。
今回、彼女を前編・後編で記事にさせていただきました。
有田町というちいさな地方の田舎町に暮らしていても、おもしろい未来を描ければ人は幸せになれる。彼女のストーリーを通して伝えられるかもしれないと思って取材を依頼したのですが、その期待以上の答えを届けてくれました。
おもしろい未来を描くためには、自分のスキを知ることだと思います。でも、それは意外と難しくて、すぐ見つかる人もいればすごく時間がかかる人もいます。そこに寄り添って一緒に “宝探し” をするのが灯す屋であるし、灯す屋に限らずこのまちにはそんな人たちがたくさんいるなと思います。
武市さんが見つけたスキが、これからの未来で輝きつづけますように。
取材(対談)の音声はこちら
武市京子のプロフィール
有田町出身、伊万里高校卒業、佐賀大学芸術地域デザイン学部。
小さい頃から絵を描くのが大好きで、今は地域とデザインを学んでいます。黄色が大好きです。